平成19年7月2日設置。

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「・・・ウィスデラぁ」
鼻の奥につん、と涙の感触がつたわる。俺は自分のものではないその感覚に目を覚ます。起き上がり目をこすると、ウィスデロが俺の名前を呼んでいた。
「何泣いてんだ、ばか」
「だって、・・・だって」
起こされたことに対する不満を示しただけなのにウィスデロは幼子のようにぐずりだす。そのうち瞳からはぼろぼろと大粒のなみだがあふれ出し、カーペットとシーツにおおきなしみをつくった。久し振りに、思い切り手加減泣く泣いているウィスデロを見たな、とぼんやり考える。だけどそうぼーっとしていられるわけもなく、すぐに俺にも悲しみがつたわってくる。瞳のふちに涙が溜まり、ぽろりとこぼれる。
「何で泣いてんの」
「・・・夢見た」
「そんで、俺のところに来たわけだ。いけしゃあしゃあと」
ウィスデロが泣かなければ、俺は泣けない。このときとばかりに無理矢理いじめてみる。正直に言えば、昔のことはもう怨んでなんかない。確かに怖い時もあるけれど、もう時効はとっくの昔に過ぎている。それに俺だって同じくらいひどいことをしたのだから、おあいこなのだ。
だから俺がウィスデロにひどい言葉を吐く理由はそれだけ。そう自分に言い聞かせる。
「ごめ、ひっ、ぐ・・・ウィスデラ、ごめん、なさ・・・っ」
ぼろぼろと手加減無くウィスデロが泣く。俺の喉のおくからもそのうち嗚咽がもれてくる。
手を伸ばして、ピンクのブロンドのその髪に、触れる。ウィスデロは抵抗の色を示さない。そのままぎゅっと抱きしめてみた。遠慮なく背中に腕がまわってくる。俺も力を強め、返す。
「もういいから。いいからとりあえず泣き止め。自分の意思じゃないのに泣くのはあんまり楽じゃない」
嘘をついてみた。
「・・・ごめん」
「別にいいけど。つーかお前熱いんだけど、熱?なんか頭ぼーっとしてきた」
「39度・・・あったようななかったような」
思わず殴ってしまいそうになる返答。むっとしてウィスデロの体を引き離し、そのまま額をあわせて熱をはかる。冗談みたいなあつさだった。
「あー・・・うつせ、とりあえず」
「え?うつせって・・・え?風邪を?」
きょとんと目を見開くウィスデロ(なんかいつも以上に、幼い)の頬を手加減しながらつねりつつ、俺にできる最大限の優しさを発揮してみる。こんなのはただの気まぐれだ。心の中で繰り返す。ウィスデロに悟られないように。知られてしまわないように、ひっそりと。
「風邪。うつすと軽くなるとかなんとか迷信あるだろ、実行してみてもいいかな、と」
「だめっ!」
いきなり目の前で大声だされた。あのー頭痛いんですけど。
「それは駄目だよ倫理的に論理的に道徳的に破滅的にナンセンスだよ無理無理無理うつせない!」
「何で」
「だ、だってあたし一応おねえちゃんだし」
「そういう建前は好きじゃないな」
切り捨てるとウィスデロはぐっと唸る。俺の背中から腕をほどき、二歩後退して、右手で前髪をかきあげながら彼女は一言、言った。
「・・・自分が楽になるために、きみを苦しませるなんて、もうできない」
手首の傷を眺めながらウィスデロの言葉を聴き、味わい、吟味する。
「ああそう、なら」と呟いて俺はベッドから降り、同じように二歩、全身。
「俺が自分からいけばいいのかな」
「そういう問題でもないよばかぁ!もういい帰る!唯のところにいく!」
「あなたが行くことで風邪菌をすでにばらまいているのですけど」
「・・・」
なんとなく楽しかった。
姉と弟、双子のかたわれ、彼女との関係の名前なんて、どうでも構わない。
「もらってやってもいいっていってんだから、素直に従うべきだろ」
そういってウィスデロの手をとり手首に口付けを落とす。
ここへのキスの意味はさあなんだったか考えながら、とりあえず、笑顔をつくってみた。
鼻の奥につん、と涙の感触がつたわる。俺は自分のものではないその感覚に目を覚ます。起き上がり目をこすると、ウィスデロが俺の名前を呼んでいた。
「何泣いてんだ、ばか」
「だって、・・・だって」
起こされたことに対する不満を示しただけなのにウィスデロは幼子のようにぐずりだす。そのうち瞳からはぼろぼろと大粒のなみだがあふれ出し、カーペットとシーツにおおきなしみをつくった。久し振りに、思い切り手加減泣く泣いているウィスデロを見たな、とぼんやり考える。だけどそうぼーっとしていられるわけもなく、すぐに俺にも悲しみがつたわってくる。瞳のふちに涙が溜まり、ぽろりとこぼれる。
「何で泣いてんの」
「・・・夢見た」
「そんで、俺のところに来たわけだ。いけしゃあしゃあと」
ウィスデロが泣かなければ、俺は泣けない。このときとばかりに無理矢理いじめてみる。正直に言えば、昔のことはもう怨んでなんかない。確かに怖い時もあるけれど、もう時効はとっくの昔に過ぎている。それに俺だって同じくらいひどいことをしたのだから、おあいこなのだ。
だから俺がウィスデロにひどい言葉を吐く理由はそれだけ。そう自分に言い聞かせる。
「ごめ、ひっ、ぐ・・・ウィスデラ、ごめん、なさ・・・っ」
ぼろぼろと手加減無くウィスデロが泣く。俺の喉のおくからもそのうち嗚咽がもれてくる。
手を伸ばして、ピンクのブロンドのその髪に、触れる。ウィスデロは抵抗の色を示さない。そのままぎゅっと抱きしめてみた。遠慮なく背中に腕がまわってくる。俺も力を強め、返す。
「もういいから。いいからとりあえず泣き止め。自分の意思じゃないのに泣くのはあんまり楽じゃない」
嘘をついてみた。
「・・・ごめん」
「別にいいけど。つーかお前熱いんだけど、熱?なんか頭ぼーっとしてきた」
「39度・・・あったようななかったような」
思わず殴ってしまいそうになる返答。むっとしてウィスデロの体を引き離し、そのまま額をあわせて熱をはかる。冗談みたいなあつさだった。
「あー・・・うつせ、とりあえず」
「え?うつせって・・・え?風邪を?」
きょとんと目を見開くウィスデロ(なんかいつも以上に、幼い)の頬を手加減しながらつねりつつ、俺にできる最大限の優しさを発揮してみる。こんなのはただの気まぐれだ。心の中で繰り返す。ウィスデロに悟られないように。知られてしまわないように、ひっそりと。
「風邪。うつすと軽くなるとかなんとか迷信あるだろ、実行してみてもいいかな、と」
「だめっ!」
いきなり目の前で大声だされた。あのー頭痛いんですけど。
「それは駄目だよ倫理的に論理的に道徳的に破滅的にナンセンスだよ無理無理無理うつせない!」
「何で」
「だ、だってあたし一応おねえちゃんだし」
「そういう建前は好きじゃないな」
切り捨てるとウィスデロはぐっと唸る。俺の背中から腕をほどき、二歩後退して、右手で前髪をかきあげながら彼女は一言、言った。
「・・・自分が楽になるために、きみを苦しませるなんて、もうできない」
手首の傷を眺めながらウィスデロの言葉を聴き、味わい、吟味する。
「ああそう、なら」と呟いて俺はベッドから降り、同じように二歩、全身。
「俺が自分からいけばいいのかな」
「そういう問題でもないよばかぁ!もういい帰る!唯のところにいく!」
「あなたが行くことで風邪菌をすでにばらまいているのですけど」
「・・・」
なんとなく楽しかった。
姉と弟、双子のかたわれ、彼女との関係の名前なんて、どうでも構わない。
「もらってやってもいいっていってんだから、素直に従うべきだろ」
そういってウィスデロの手をとり手首に口付けを落とす。
ここへのキスの意味はさあなんだったか考えながら、とりあえず、笑顔をつくってみた。
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